- 2022.10.17
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HPVワクチン
HPVワクチン導入後のHPV感染の特徴
Sekine M, 他. Epidemiologic Profile of Type-Specific Human Papillomavirus Infection after Initiation of HPV Vaccination. Vaccines. 2020; 8: 425. doi: 10.3390/vaccines8030425.
HPVワクチン導入後にHPV16/18の感染率は減少
他のハイリスクHPVの割合が増加し、ハイリスクHPV感染全体の陽性率は同程度であった
要旨
2010年にHPVワクチンは国の緊急促進事業として積極的接種勧奨、費用の助成を行う政策がとられました(Organized human papillomavirus vaccination、以下OHPV)。
1994年以降に生まれた女性がこのOHPVの対象となっており、接種率は70〜80%と高い水準でしたが、その後OHPVそのものは継続したものの、積極的接種勧奨が中止となり、接種率は急激に低下しています。
OHPV開始前後でHPV感染がどのように変化したかを明らかにするため、20〜21歳の女性のがん検診の際に説明し同意を得られた場合にがん検診で採取した検体の残りを試料として調査しました。
2014年度のがん検診対象者には1993年生まれと1994年生まれの女性がおり、1993年生まれはOHPV導入以前、1994年生まれはOHPV導入後の世代となります。このため、ワクチン接種率は30.7%でした。2015年度以降はOHPV導入後のためワクチン接種率は、2015年度は86.6%、2016年度は88.4%、2017年度は93.7%と統計学的に有意に高くなっています(p<0.01)(表1)
ハイリスクHPVとは持続的な感染をすることで子宮頸癌になるリスクの高い型をいいます。子宮頸癌に占める割合は16、18型が70%程度で、他に31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、68があります。OHPVとして使用されているHPVワクチンは2価(HPV16、18に対するもの)と4価(HPV16、18に加えて良性のいぼの原因となる6、11型に対するもの)の2種類があります。
ハイリスクHPV全体の陽性率はどの年度も10~11%と変化はありませんでした。HPV16/18型の陽性率は2014年では1.3%でしたが、年を追うごとに減っていき2017年では0.0%になっていました。(図1)
ハイリスクHPVの頻度を多い方から3つの型を、OHPV導入以前の世代を含む2014年度とOHPV導入後の2015~2017年度で比較しました。2014年度はHPV52、16、56の順で多く、2015~2017年度はHPV52、58、56となっています。HPV16、33はOHPV導入後減少している一方で、HPV58は著明に増加していました。
本研究の課題は日本の一地域で研究が実施されたため、日本全国の状況を反映していない可能性があること、2014年度のワクチン接種率が30.7%とやや高いためHPVの型の分布に影響している可能性があることです。
まとめ
OHPV導入後にはHPV16、18の陽性率が著明に減少し、感染を認めるHPV型の特徴が変化していることが明らかになりました。積極的勧奨中止以降のHPVワクチン接種率の低下は若年女性に再度HPV16、18に関連する子宮頸がんのリスクももたらすことになり、憂慮すべき問題です。
著者の先生からのコメント
今回のデータから、日本におけるHPVワクチンの公費接種はHPV16/18型感染の減少に明らかな効果を認めていることが分かります。HPV16/18型感染が減少した影響で、他のハイリスクHPV型の感染割合がどのように変化してくるかは、今後も注目していく必要があります。