- 2024.2.2
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子宮頸がん予防情報
2012年から2017年の日本国内の妊娠と関連した子宮頸がんの傾向
Enomoto S, Yoshihara K, Kondo E, Iwata A, Tanaka M, et al., Trends in Pregnancy-Associated Cervical Cancer in Japan between 2012 and 2017: A Multicenter Survey. Cancers 2022;14(13):3072.
多施設共同研究で得られた大規模データ
妊娠に関連した子宮頸がんは増加傾向にあり、治療法の選択はがんの状態と母体および胎児の双方にもたらされる利益を考慮する必要がある。
要旨
- 日本では35歳以上で出産する女性が増え、若年者の子宮頸がんが増えていることから、妊娠に関連した子宮頸がんが問題となっています。しかし、妊娠に関連した子宮頸がんの調査はあるものの、単年度だったり参加施設が異なっていたりしていたため日本の動向をつかむことはできていませんでした。
- 各国の子宮頸がんの治療ガイドラインに妊娠中への対応の項目が設けられるようになっていますが、エビデンス(科学的根拠)の積み重ねはまだ充分ではありません。そこでこの研究では、日本での妊娠関連子宮頸がんの罹患の傾向、治療法の選択や母体および新生児の転帰を明らかにすることを目的として調査を行いました。
- 研究は多施設後方視的観察研究の手法を用いて、日本国内の中規模以上の病院523施設で2012年1月1日~2017年12月31日の間に妊娠に関連した子宮頸がんについて行われました。後方視的観察研究とは調査の時点からさかのぼって必要な情報を診療録などの記録を振り返り収集する方法です。短期間の調査でたくさんの症例数を得ることができる反面、必要な情報が欠損していて調査対象とならないなどの欠点があります。
- 日本では人工妊娠中絶は妊娠22週未満の場合にのみ認められています。このため、今回の研究では妊娠22週未満で診断された場合と妊娠22週以降で診断された場合を分けて考えています。また妊娠中の子宮頸がんⅠB1期(腫瘍が子宮頸部にとどまる浸潤がんのうち浸潤の深さが5mmをこえ、腫瘍の最大径が2㎝以下のもの)の治療方針はまだ確立されていないため、妊娠22週未満のⅠB1期の症例を特に詳細に検討しています。
- 妊娠22週以降で子宮頸がんと診断された40例のうち、34例(85.0%)は介入することなく分娩まで注意深く経過観察されていました。妊娠中に治療を行った症例は6例あり、治療内容は円錐切除術(子宮頸部の一部を切り取る手術)が3例、子宮頸部摘出術(子宮頸部全体を取る手術)が1例、術前化学療法(手術する前に行う抗がん剤治療)が2例でした。
- 妊娠22週未満で診断された163例のうち、111例は妊娠を継続し、47例は妊娠を中止、5例が流早産となりました。妊娠を継続した症例で妊娠中に施行された治療は円錐切除術64例、子宮頸部摘出術16例、術前化学療法16例でした。
- 妊娠22週未満で診断されたIB1期の90例をより詳細に検討しています。妊娠を中止した症例が31例、妊娠を継続した症例が59例ありました。多くの症例は治療のために満期(37週以降)になる前に帝王切開で分娩となっています。妊娠中の対応によって厳密な経過観察群(9例)、円錐切除術群(26例)、子宮頸部摘出術群(14例)、術前化学療法群(10例)に分類し比較すると、無増悪生存期間(治療中や治療後にがんが進行せず安定した状態である期間)、全生存期間に有意差はありませんでした。出生した児の体重パーセンタイル(分娩した週数の標準的な体重に対してどのくらいはずれているか)は、厳密な経過観察群よりも術助化学療法群の方が小さい結果でした(p = 0.029:統計学的に差があり)。満期分娩率は子宮頸部摘出術群で35%と他の群より比較的高くなっていました。
ポイント
妊娠に関連した子宮頸がんに対する治療は、病期を推定した上で母体と胎児の両方の利益を考慮し決定する必要があるとまとめられています。