- 2021.10.6
-
子宮頸がん予防情報
HPVワクチンに関する啓発資材の効果を検証するランダム化比較試験
Suzuki Y, Sukegawa A, Ueda Y, Sekine M, Enomoto T, Miyagi E Effect of a Brief Web-Based Educational Intervention on Willingness to Consider Human Papillomavirus Vaccination for Children in Japan: Randomized Controlled Trial J Med Internet Res 2021;23(9):e28355 URL: https://www.jmir.org/2021/9/e28355 DOI: 10.2196/28355
簡易的な啓発資材は子供のHPVワクチン接種に対する意欲増加に効果あり!
サブ解析では、意欲増加は女性で認められず、男性のみに効果!
要約
方法:
- 民間会社のモニターを用い、20-69歳までの1660名をリクルート
- この試験は2018年3月中旬に実施され、約24時間で予定人数が集まった
- 性別(男女)年齢層(20代、30代、40代、50代、60代)のそれぞれのグループの人数が均等になるように参加者をリクルートし、ランダム化
- 介入群はナッジ理論を活用した3文の簡易的なHPVに関する情報(1ページのスライド程度)を提供し、対照群は何も見せないコントロール群として1:1割付
- 介入直後の参加者のHPVワクチン予防接種への意識変容を検証
(用語の解説)
※ランダム化比較試験:治療(もしくは介入)の効果を検証する最も信頼度の高い研究デザイン。参加者はランダムに治療群か非治療群に割り振られる
※ナッジ理論:人の意識や行動を望ましいと思われる方向にそっと後押しする手法
※介入:問題となっている課題や状態を改善させるために行う何らかの行為、手法のこと。例えば、何らかの病気に対する「治療」が介入にあたる
結果:
- 介入群で、HPVワクチンの娘への接種を前向きに考える参加者は4.8%の増加(調整オッズ比:1.32 [95% Cl 1.04-1.69])
- 介入群で、HPVワクチンの息子への接種を前向きに考える参加者は3.9%の増加(調整オッズ比:1.38 [95% Cl 1.05-1.80])
- 性別によるサブ解析では、男性参加者は介入群で、娘への接種を前向きに考える参加者は8.2%の増加(調整オッズ比:1.46 [95% Cl 1.05-2.02])
- 一方で女性参加者は介入群で、娘への接種を前向きに考える参加者は1.5%の増加にとどまり有意な増加は認めなかった
(用語の解説)
※95% CI:95%信頼区間。オッズ比は95%の確立でこの範囲におさまることを意味する。今回の場合、下限が1以上なので、95%の確立でこの事象が起こりやすいことが示される重要な数値
※調整オッズ比:比較する2つグループの属性や知識レベルなどを調整した上で、グループ間の事象の起こりやすさを比較し、数値化したもの
結論:
- 簡易的な啓発資材は子供へのHPVワクチン接種意欲を増加させたが、この変化は女性で見られず男性でのみ認められた
- 日本のHPVワクチン接種における父親への啓発の有効性を示唆
- 健康に関する啓発においては性別によっては全く効果がない可能性が潜んでいることが示唆された
ポイント
- HPVワクチンや子宮頸がんに関する啓発は重要だが、啓発手法と効果のある集団を特定する必要がある。本研究では男性への啓発が子供のHPVワクチン接種を促進させる一つのカギとなることが推測される
- 今後は、他の啓発手法(ナラティブな分かりやすい言葉でのメッセージなど)による効果検証や、持続的な意識変容効果、行動変容効果(実際のHPVワクチン接種率)について検証することを計画している