- 2021.3.2
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子宮頸がん予防情報
【海外9価HPVワクチン特集論文(2)】フランスにおける9価HPVワクチンによる潜在的な疾患発生抑制効果
Riethmuller D, 他. Potential Impact of a Nonavalent HPV Vaccine on the Occurrence of HPV-related Diseases in France. BMC Public Health 2015; 15: 453.
9価HPVワクチンにより潜在的に90%の浸潤がん・高度扁平上皮内病変・外陰疣贅・肛門がんの発生が抑制される可能性がある
フランスにおける9価HPVワクチンによる疾患発生抑制効果を予測
要旨
- フランスで行われた臨床試験 Etude de la Distribution des Types d’HPV(EDiTH)で、HPV関連疾患(浸潤子宮頸がん516例,高度扁平上皮内病変(HSIL)493例,軽度扁平上皮内病変(LSIL)397例,外陰疣贅423例,咽頭喉頭がん314例)の病変からDNAを抽出して、HPVのサブタイプを解析した。この先行研究では、4価(6/11/16/18型のHPVを予防)のHPVワクチンは14-33%の軽度扁平上皮内病変および70-83%の子宮頸がんや肛門がんに潜在的な効果があると報告されている
- 本研究では、前述の臨床試験のデータを用いて、4価(6/11/16/18)のHPVワクチンと9価(6/11/16/18/31/33/45/52/58)HPVワクチンの潜在的な効果を比較した。
- 潜在的な効果の見積は、病変から検出されるHPVのサブタイプが、HPVワクチンのカバーするタイプと一致すれば潜在的な効果があると判断している。指標は二種類を用いている 低い見積;①9価ワクチンでカバーされるサブタイプ(6/11/16/18/31/33/45/52/58)のみが検出されその他のHPVサブタイプの感染を認めない症例の割合 高い見積;②9価ワクチンでカバーされるサブタイプ(6/11/16/18/31/33/45/52/58)に加えて、他のHPVサブタイプも検出される症例の割合
- HPV9価ワクチンの潜在的効果は、浸潤子宮頸がんで85%(低い見積)から92%(高い見積)、 子宮頸部高度上皮内病変で77%から90%、子宮頸部軽度上皮内病変で26%から56%、外陰疣贅で69%から90%、肛門がんで81%から93%、咽喉がんで41%から44%であった。
- 9価HPVワクチンと4価HPVワクチンの比較で、カバーするサブタイプの追加効果を検討すると、子宮頸がんで9.9%(低い見積)から15.3%(高い見積)、子宮頸部高度上皮内病変で24.7%から33.3%、子宮頸部軽度上皮内病変で12.3%から22.7%、外陰疣贅で2.1%から5.4%、肛門がんで8.5%から10.4%、咽喉がんで0.0%から1.6%の追加効果が想定された。
ポイント
多種のHPV関連疾患より検出されるHPVサブタイプを解析して、9価HPVワクチンによる疾患発生抑制効果を予測した。9価(6/11/16/18/31/33/45/52/58)HPVワクチンは4価(6/11/16/18型)ワクチンと比べ、浸潤がん・HSIL・LSILに対する潜在的な効果を有意に増加させることが推計された。
補足
- 各HPV関連疾患のHPVサブタイプを解析し、4価ではカバーされないが9価でカバーされる症例の割合(追加効果)を、子宮頸がんの9.9%-15.3%、HSILの24.7-33.3%、LSILの12.3-22.7%、外陰疣贅の2.1-5.4%、肛門がんの8.5-10.4%、咽喉がんの0.0-1.6%と想定した。
- HPVの混合感染を認める病変の場合、どのHPVサブタイプが発がんの原因となっているか特定が困難である。単独感染の場合はそのHPVが原因と推測され、混合感染の場合はそのHPVが発がんの原因となっている可能性がある。そこで潜在的な効果の見積には「低い見積」と「高い見積」二種類の指標を用いている。